1982年にリリースされた。当時はLPレコードだったが、2013年にデジタル・リマスタリング版がCDで発売された。
内田裕也、ジョー山中、松田優作、萩原健一、このあたりの面々は、厄介な不良だが筋の通ったかっこいい兄貴たちだった。
片岡義男のおしゃれな感じとは路線がかなり違うが、彼らの発する危ない空気には、単純にあこがれていた。自分にないものばかりを持っていたからだろう。
「男はタフでなければ生きてはいけない。やさしくなければ生きていく資格がない」
一世を風靡した角川映画の一連で、高倉健が主演した「野生の証明」の宣伝文句である。
この映画に関するエッセイかインタビューを読んでいて記憶に残っているのが、角川春樹氏の「あのセリフはマーロウなんだけど、今時の若い子はチャンドラーなんか読まないんだね」というようなコメントだ。僕もチャンドラーなんて知らなかった。で、かっこよさげなので読んでみるのだが、もひとつ翻訳文が頭に入ってこない。もともと翻訳小説を読むのが苦手なのだ。でも、チャンドラーとフィリップ・マーロウと、ハードボイルド、という3つのカタカナはしっかり覚えた。
で、アルバム「さらば愛しき女よ」である。
収録されている曲名は、チャンドラーの小説のタイトルからとられている。
そしてLP時代のA面は、Criminal side(事件)、B面は、Detective side(探偵)とネーミングされている。
これだけで興奮できるのだが、中に収録されている曲がしぶい。
曲を提供しているのは井上堯之、大野克夫、おっ、太陽にほえろ!やん、宇崎竜童、BORO、ってめっちゃしぶいやん、ジョニー大倉は芝居でええ味だしてたなぁ、というような面々でこれまた興奮なのである。
内田裕也の歌唱力はどうなのかわからないけど、雰囲気はあってめっちゃしぶい。ちょっと気取りすぎな感じもあるけど、ハードボイルドってやせ我慢の美学なので、どつかれてあざだらけでもかっこつけてみせる、的なところは、逆にさまになる人はすくないだろう。
このアルバムは、昔、カセットテープで聞いていた。もうカセットテープは再生機がなくなってただのプラスティックごみになってしまっている。ふと聞きたくなってyoutubeを探したらいくつかあったけど、音質も悪いし、アルバムの全曲は見つからない。CDがないか検索してもCDは廃盤。あっても中古品で値段が高い。と思ってあきらめかけてたら、タワーレコードのオンラインサイトで正価で見つけた。任意の店で取り置きもしてくれるそうなので、家からは一番近い店で取り置きを頼んでおいた。
実は何年か前にもネットや中古CD店で探して見つけられなくて、タワーレコードに取り寄せを頼んだことがあった。その時は、あちこちの倉庫を探すから時間がかかる、ということで携帯の電話番号を伝えておいたが、まったく連絡がなかった、ということがあったのだが、今回、タワーレコードにあったのだ。なんでかな。もしかして亡くなってから少し増刷したのかもな。前回取り寄せを頼んだ時は裕也さんもまだ生きていたので。
ちなみに内田裕也氏。ヨコハマ・ヨコスカなイメージがあったのだが、なんと大阪府堺市で生まれ、高校卒業まで堺市で暮らしたそうだ。しかも高校でロックに出会うまでは、偏差値の高い優等生だったようである。酔っぱらってても、てやんでぇ、な話し方している印象があったけど、がんばって矯正したんか。ロックって関西弁でも似合うんやないかな。やっぱレゲエかブルースかな。