時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

読書メモ

読書メモ ワンダフル・ライフ 丸山正樹 光文社

すらすらと読める。テーマはとても重いのだが。 頚損患者への治療やリハビリのシーンがあるが、かなり正確な描写がされれているようだ。 フィクションのストーリーの中に、ニュースで見聞きして記憶にある現実の出来事が時折挿入されていて、実はこの物語の…

そして海の泡になる 葉真中顕 2020年 朝日新聞出版

尾上縫をモデルにしたミステリである。が、全編、バブル経済の頃の世相がさまざまに描かれていく。当時の様子を振り返りながら、なるほど、こんなことだったか、と今更ながらに、あぶく銭に踊らされた人々の心情を考える。 本書は、フィクションである。だが…

今宵も喫茶ドードーのキッチンで 標野凪 双葉文庫 2022年5月

大人の童話のような読後感だった。 都会の中に隠れるようにある小さな森の奥の小さな喫茶店。 喫茶店はおひとりさま専用だという。 一風変わったマスターが作る、一風変わった料理が、訪れた客の心を癒やす。 複雑な話ではないが、誰もが多かれ少なかれ、共…

読書メモ 二人の嘘  幻冬舎 021/6/23 一雫ライオン著

帯の文句は 『貌の女性判事と謎多き殺人鬼 恋で終われば、この悲劇は起きなかった』 初読の作家さん。読み方がわからない。いちしずく?ひとしずく? 漫画家とか、ラノベ作家のような名前だけど、重い深いお話です。 哀しい、せつない、そんな感情が喚起され…

名探偵外来~泌尿器科医の事件簿 似鳥鶏 光文社 2022年12月

昔、泌尿器科の医師の講演を聞いたことがある。わりと専門的なテーマだったのだが、講師の自己紹介で、「〇〇病院の泌尿器科の〇〇です。私を呼ぶときは、かならず泌尿器科の、と呼んでください。よく病棟で看護師さんに「泌尿器の〇〇先生」と声を掛けられ…

読書メモ お探し物は図書室まで 青山美智子 2023年3月 ポプラ文庫

2021年の本屋大賞2位ということで、今春文庫に入って気になっていた。 図書館にオーダーして、読んでみて、とてもよかったので文庫を買った。 どう良かったのか、というと、しばらくしてからまた読みたくなる気がしたからだ。 サスペンスやミステリーでは、…

読書メモ 囚われの山 伊藤潤 中公文庫 2023年5月

1977年公開の映画「八甲田山」は、父親に誘われてふたりで観に行った最初で最後の映画だ。高度経済成長期を支えた猛烈サラリーマンだった父親は、土日は接待ゴルフでほとんど家にいたことがない。夏休みの家族旅行も、途中で合流して、一足先に帰る、という…

一気読み必至! 「邦人奪還-自衛隊特殊部隊が動くとき-」伊藤祐靖 新潮文庫 2023.3

ノンフィクションだとNGだらけで書けないから、フィクションにしてみたした、という感じなのだろうか。中にいた人だから書ける自衛隊の内部事情やディティールのリアリティ、というだけではなく、みんながテレビで見てよく知っている衆目の中の要人暗殺事件…

必殺シリーズ秘史 50年目の告白録 著:高鳥都 立東舎 2022/9/16

制作、演出、撮影、照明、録音、記録、調音、効果、美術、衣装、など。必殺を作ってきた裏方の皆さんに聞き取りを行ったインタビュー集。 これが面白い。 テレビでよく見たあんなシーン、こんなシーンも、これだけの人たちが、さんざんすったもんだして、知…

読書メモ 「かがみの孤城」辻村深月 ポプラ文庫 2021年3月

本屋大賞を受賞し、累計100万部。文庫の上下巻は治まる化粧箱に入ったプレゼント用バージョンも売られていた。大いに話題になっていたのは知っていたが、不登校になっている中学生の話だと聞いて、どこまで共感できるのか、そのくらいの年代の子たちが読めば…

読書メモ 凛の弦音 我孫子武丸 光文社 2018年10月

弓道部の女子高生を主人公にした青春小説をさらに。 今回はミステリー作家の我孫子武丸。基本線は青春小説なのだが、ミステリーの味付けもアクセント程度に入っている。弓道に関する知識もたっぷりと披露される。 「凛として弓を引く」との違いは、こちらは…

読書メモ 凛として弓を引く 碧野圭 講談社文庫 2021年10月

本屋で、これの第2弾である文庫本「青雲篇」が新刊として平積みされていたので、まずは第一弾を、と思って読んでみた。主人公がひょんなことから弓道と出会い、道場に通い始めて~、というお話だが、派手な事件が起こったりはせず、主人公であるまったくの初…

読書メモ 永遠の夏をあとに 雪乃紗衣 創元文芸文庫 2022年7月

今週のお題「最近おもしろかった本」 ファンタジーというには描かれる現実がシビアすぎる。ホラーというには少年と少女の傷だらけの夏が切なすぎる。ノスタルジックな情景の中で展開する、少年と少女の最後の夏休みのお話。物語の仕掛けを読み解くことを放棄…

読書メモ 「私は真実が知りたい」赤木雅子+相澤冬樹(2020年文藝春秋)

小泉今日子さんがこの本を読んで、ネットフリックスのドラマ「新聞記者」で赤木雅子さんの役を引き受けたものの、赤木さん自身に了解をとっていない演出があることで役を降りた、というインタビューをネットで読んだ。小泉今日子さんは、演技者として優れて…

読書メモ 「コロナ黙示録 2020年災厄の襲来」海堂尊 2022年7月 宝島社文庫

文庫の新刊。続編の「コロナ狂騒録 2021五輪の饗宴」も同時に刊行されている。 本書では、クルーズ船の入港騒動からマスクの配布あたりまで、不定愁訴外来の田口先生をはじめ、チーム・バチスタシリーズのおなじみの面々が、コロナに振り回される様子を描く…

読書メモ 「ムーンライト・イン」 中島京子 2021 角川書店

冒頭で、自転車で旅をしている青年(若めの中年?)が出てきたので、それで手にした小説である。著者の作品は、映画にもなった「ちいさなおうち」を読んだことがあった。 この冒頭の自転車旅の若めの中年、が主人公というか狂言回しの役目で、大雨の中、雨宿…

読書メモ 「嫌われた監督」鈴木忠平 2021年9月 文芸春秋

久しぶりの、半徹一気読みだった。 落合博光は中日をどう変えたのか。というサブタイトルがついているように、中日の監督時代の落合について書かれたスポーツノンフィクションである。 中日ファンではないし、落合が中日の監督だった頃は、子どもが小さくて…

読書メモ 「最後の角川春樹」 伊藤彰彦 毎日新聞出版 2021年11月

年代的に、角川文庫や角川映画にはずいぶんと世話になったんだなぁ、と本書を読みながら思った。しかし、本書で振り返れば、熱心に劇場に通った角川映画も初期の一時期だけだったようだ。金田一耕助ブームの期間とその後少しだけ。 当時はその宣伝手法ばかり…

読書メモ 「廃墟の白墨」遠田潤子著 光文社 2019年9月

新聞の書評で見かけた。まったく知らない作家だった。 読んでみて、これは面白かった。ハラハラドキドキのミステリーとか、そういうのではなく、静かな読書感である。設定そのものが、非日常的でファンタジー感もある。が、ファンタジーという語感から想像さ…

読書メモ LINEマンガで韓国のマンガを読んで思う。「鉄槌教師」

たまたまなのか、こういう傾向のマンガが多いのか。 読んだのは、荒廃した高校のいじめの話で、出てくる悪い奴が、いじめというような陰湿なものではなく、ただの粗暴犯で、たとえば銃器を持ったロシア兵が、武器を持たない一般のウクライナ人を虐殺するかの…

読書メモ 「女帝 小池百合子」石井妙子著 文芸春秋 2020年5月 

この本が書店で平積みになっていたのは覚えている。先日ブックオフで300円で売られているのを見た。 内容は、これはとんでもなく興味深いルポルタージュだった。綿密な取材の跡が見え、いわゆるタレント本や暴露本のような類ではない。 読む限り、さもありな…

回想法3 探偵事務所と黒猫のブルース

かれこれ35年も前のことだ。いよいよ残り少なくなってきた京都での学生生活をどんな風に過ごそうかと考えつつ、卒業旅行の資金もためなければ、ということで、「記憶に残る珍しいバイトをして小遣い稼ぎもしよう」と欲張った計画を立てた。 当時は、ネットも…

これって小説のフリした暴露本?「女警」古野まほろ 角川文庫

これはとんでもない小説に出会ってしまった。「ハコヅメ」を見て、交番勤務の婦警さんもたいへんだねー、と微笑んでいた笑顔が凍り付いてしまった。 小説なのだ。警察小説だ。冒頭、驚くべき事件が起こる。しかし、単純に見える事件には謎がありそうだ。その…

読書メモ こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと 是枝裕和 2019年 文芸春秋

「万引き家族」「海街Diary」の是枝監督が、カトリーヌ・ドヌーヴを主演に、2019年に制作した日仏合作映画「真実」の、構想から、脚本執筆から、出演交渉から、ロケハンから、撮影から、クランクアップまでの、映画作りのすべての道のりを綴った制作日記であ…

「マガポケ」「ピッコマ」「LINEマンガ」

今週のお題「読書の秋」 読書の秋なのだが、スマホのマンガアプリを3つほど入れてみて、それにすっかり時間を取られてしまっている。どれも似たようなサービス形態で、連載マンガの何話かまでが無料で読めて、それ以降は、それぞれのサイト独自のポイントを…

読書メモ 電子書籍「余命10年」小坂流加 文芸社

これもアマプラで読める小説である。タイトルママの内容で、タイトルママに話は進むのだが、わかっていてもやられてしまう。心の乱れはあるものの、特段哲学的にややこしい死生観を語るわけでもなく、「君の膵臓を食べたい」の世界に近い気がする。 スマホで…

読書メモ 世田谷一家殺人事件 銘肌鏤骨 青志社 2020年10月

事件から20年が経ち、犯行現場である被害者宅が取り壊されるというタイミングで書かれたもので、著者にしては、同じ事件をテーマにした前著に続く続編である。 この事件で警察の初動に問題があったことは多くの指摘がされている。あまりにも多くの遺留品があ…

読書メモ 駅に泊まろう 豊田巧 光文社文庫 2020年9月

北海道の比羅夫という駅には、駅舎を用いた民宿が実際にあるらしい。 駅舎といっても廃駅ではなく、JR函館本線の現役の駅で当然列車も停車する。「駅の宿いらふ」という。 さて、本書である。最初はタイトルを見て、終電が去った駅で野宿しながら旅をする話…

読書メモ 小説家になって億を稼ごう 松岡圭祐 新潮新書 2021年3月

人気作家が売れなくなると書くのが小説指南書だとか聞いたことがある。それにしては、タイトルが弾けてるなぁ、と思って読んでみたら中身も弾けてた。 Ⅰ部の小説家になろう編では、教科書的な内容ではなくキャラ設定から空想を広げていく作者オリジナルの方…

読書メモ その話は今日はやめておきましょう 井上荒野 2018年 毎日新聞出版

夫が定年退職してしばらくたった中高年夫婦が、クロスバイク(スポーツタイプの自転車)趣味にしてサイクリングを始めました、というところから始まる話。自転車が重要な小道具として登場する小説、しかも、レースの話ではなくクロスバイクでのチャリ散歩、…