まほり 高田大介 2019.10.2初版 KADOKAWA
新聞の書評でなんとなく興味を持って手に入れた。伝奇小説というのだろうか、人里離れた集落の奇習・因習の気配はぞくぞくする不気味さを醸し出していて引き込まれた。
途中の民俗学の学術的な解説に面食らい、学者同士の会話についていけず、古文書の写真が挿入されるにいたっては、小説なんだか学術書なんだかわからなくなってくるのだが、それでも引き込まれて読み続けたのは、そこに描かれている古い日本には日常的に存在したのであろな伝奇的世界と、少女を助けるための少年の冒険と、探偵役の若い男女の今時珍しい清潔なラブコメ感だった。
ネタばれになるので詳しくは書かないが、奇妙な伝奇的世界にゾッとしてみたり、少年の冒険譚にハラハラしてみたり、ラブコメシーンでキュンキュンしてみたり、という娯楽要素は十分にサービスされているので楽しめる。
途中の学術書と見紛うような部分は、僕は流し読みですませてしまったが、作者は言語学者でもあるということで、ここも読みどころのひとつだと思う。