時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

無双直伝英信流 居合兵法 業名「信夫」

 無双直伝英信流には、初伝に11本、中伝に10本、奥伝の居業に8本、立業に11本、番外4本、それらに加えて、太刀打之位という仕太刀と打太刀の2人で行う組太刀の型が7本ある。この7本は17代宗家のまとめだといわれていて、古流としては、これとは構成が異なる10本が伝わっている。ほかにも座った状態からの組太刀である詰合之位などもある。多くの居合道場で主に稽古されているのは、奥の居業までの40本ではないだろうか。

 

 この業名が、なかなかかっこいい。日本刀のイラストと業名の漢字をあしらったTシャツなど作れば、この先、再び増えてくるであろう海外からの観光客に売れるのではないかなぁ。海外の人にとって、漢字は、そのデザインがかっこいいらしいのだ。なんとなくかっこいいから、と腕に「図書館」っていう入れ墨をいれた白人系の外国人をテレビで見たことがある。

 

 というところで、業名をランダムに、いくつか書き出してみる。

 

横雲 霞 稲妻 浮雲 八重垣 颪  四方切 信夫  岩浪 鱗返  袖摺返 追風 附込 

浪返 月影 瀧落 壁添  追風 迅雷 絶妙剣 独妙剣 ほかにもあるよ。

 

 業の動きを思い浮かべながら漢字を見ていたら、なるほど、業のイメージだけでなく、動きに関するちょっとしたヒントなんかも隠されているのかも、なんて考えてしまう。

 

 たとえば奥伝の立業である「信夫」。「しのぶ」と呼ぶのだが、想定は、暗闇の一本道で、前からやってくる敵に悟られぬよう、道の端に身を寄せながら、そっと抜いた刀の先で、地面を叩く。前から来る敵は闇夜で目が効かないから、音のした方向から敵が来ると思ってそこに斬りかかる。もちろんこちらはそれを予測しているので、道の端から躍り出て、空を斬ってたたらを踏んでいる敵を一撃で倒すのである。

 この「しのぶ」は、やはり「忍ぶ」だと思う。音もたてず、気配もさせず、そっと身を暗闇に潜ませるわけだ。逆に言えば、それができず、前からくる敵に存在を察知されてしまったら、敵側から見れば、歩いていたら、前から来た奴が急に道の端っこに身を寄せて、そっと刀を抜いたのだから、「狼藉者!」と叫んで、問答無用で斬りかかればよいのだ。

 だから「忍ぶ」だけれど、「忍」を業名にしたら、業名からトリックが見破られてしまう。なので「信夫」という意味の分からない漢字を当てたのではないか。仮にそうであるなら、この「忍」の業、たまたま一本道を歩いていたら前から敵が来た、というわけではなさそうだ。考えてみればそれほどの闇夜なら敵も提灯くらいは持っているのではないだろうか。とすると、たまたま行き会った、というより、その人物が、この時間にそこを通るのを知っていて、最初から道の端に身を潜めていたか。ならば…。

 

 ※以上、筆者の個人的な空想です。