時速20キロの風

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クライ・マッチョ/クリント・イーストウッド

 クリント・イーストウッドが監督で主演の映画である。91歳だそうだ。声の出し方とか歩き方、背中の曲がりぐあいなど、演技なのか、そのままなのかわからないが、見た目普通に老人だった。かなりの老人だった。もちろん老人の役をしているのだが、このドラマの主人公は、70代くらいが妥当かなぁ、と思いながら見ていた。

 が、とても素敵な映画だった。派手さはなく小品という感じの静かな映画だ。老いた元ヒーローの哀愁や矜持がじわじわと沁みてくる。全編に流れるカントリーミュージックもいい。

 

 クリント・イーストウッドというと、また古い話で恐縮だが、1983年のことである。ダーティーハリー4が封切られていた。その時知り合った女の子とはじめてデートをすることになり、映画を観に行くことになったのだが、何を観るかという段になって、相手がこちらに合わせるというので、素直に観たかったダーティーハリーを選んで、こちらは楽しんだのだが、彼女はいまいちだったのかもしれず、なぜか後々まで、そう、つい最近まで、突然思い出しては「なんでダーティハリーにしたんやー」と悔やむ、ということを繰り返しているのである。

 

 思えば、別にその子がつまらなそうにしていたわけでもなく、気まずい思いをしたわけでもなく、面白かったといってくれたはずなのだが。ようするに、そういう場面で、たとえ相手がそうしてくれといったとはいえ、真正直に自分が見たい映画を選ぶのではなく、相手に好みを聞いたりしながら、一緒に観る映画を相談するというような関りができなかったその時の自分を「アホやなぁ」と思っているのである。40年近く経って、その子の顔や名前すら思い出せないのにも関わらず、後悔だけが残っているのだ。

 たぶん、その時と同じ「そういうところ」がつい最近でも自分の行動にあるということを何かで認識してこうなってるんだと思うのだが。