時速20キロの風

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読書メモ 「最後の角川春樹」 伊藤彰彦 毎日新聞出版 2021年11月

 年代的に、角川文庫や角川映画にはずいぶんと世話になったんだなぁ、と本書を読みながら思った。しかし、本書で振り返れば、熱心に劇場に通った角川映画も初期の一時期だけだったようだ。金田一耕助ブームの期間とその後少しだけ。

 当時はその宣伝手法ばかりが取り上げられ、映画に対してマニアックな友人は酷評していたが、自分は単純に、観て興奮し、感動していた。それを評価しなくて何を評価するのか、と。エンターテイメントを楽しむために映画館に行くのだから。

 

 角川春樹氏は、その後も出版や映画に活躍を続けるが、社内でごたごたがあったり、会社を飛び出して新たな出版社を起こしたり、というようなことはかすかに記憶しているが、麻薬からみで4年余りも収監されていたことは、当然ニュースにもなったのだろうが、記憶にない。胃癌の手術後に収監されたりしたそうだ。

 

 本書は、著者による角川春樹氏に対する聞き書きをまとめたインタビュー集である。中高生時代に大いに楽しんだ小説や映画の裏話も満載だ。また毀誉褒貶の激しい氏のビジネス戦術も、自身のことばで明らかにされる。

 そういう興味で読み通したが、本書はインタビュー形式でありながら、角川春樹氏のファンブックとして功績をたたえたり、美化したり、という印象は少ない。その人生の後半はプロデューサーとしても映画は当たらず負け続けの印象だからだろう。

 もう80歳になるらしい。離婚再婚を繰り返し、70歳の時に何度目かの40歳も下の奥さんとの間に子供をもうけたという。90歳まで現役で出版プロデューサーをやるのだそうだ。そうすると息子さんの成人を見届けることができることになる。

 ひさびさに監督をしたという「みをつくし料理帖」のことは知っている。感涙の人情噺で、評価も高いそうだが、封切が「鬼滅の刃」と重なって、興行収入は惨敗だったそうだ。DVDになっているのは知っているから、観てみようかと思う。