時速20キロの風

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読書メモ コロナ漂流録 海堂尊 宝島社 2023年5月5日 

 コロナにまつわるパロディ小説の第3弾。

 元首相の暗殺や、それによって明るみに出た与党議員と特定の宗教団体の癒着、ワクチン製造と補助金にまつわる裏側など、コロナ禍で様相が変わってしまった世の中の状況とそれに関する思うところを、医療の立場から、小説(作り話)っていう形にして書き上げた時事エッセイ?かな。

 医療や介護の世界は、制度ビジネスで、その時々の政策によって、方向性が大きく左右される。2年に1回改正される診療報酬は、まさに「こっちの水は甘いぞ」つまりは「こうしたらお金あげるぞ」と医療の方向性を誘導する。その方向は、国民の保健衛生にとってより善であるためのものであると思いたいが、役所の事情、政治の思惑に寄ってるんじゃないか、と思われることも多い。

 そんなわけで、医療は一般のビジネスよりも、行政や政治の影響を色濃く受けるのだ。
 それゆえに、医療者は行政や政治には普段から厳しい目を向けている。それは政治の好みが右だ、左だ、とか、どの政治家を好きだ、嫌いだ、というよりもシビアな視点なのだと思う。

 医療といえば、Twitterのまんがで、ずいぶん前から指摘されていた「脳外科医竹田くん」がようやく起訴されて実名で報道されている。本当にようやくだ。界隈ではかなりの話題になっていたが、マスコミも無視していたし、行政も放置していた。手術ミスをやらかしまくった病院をやめた後も、大手の民間医療法人でクリティカルな場面を担当する医師として勤務していた。そのことも、界隈では知れ渡っていた。よく雇うなぁ、と。患者なんか、黙ってたらわからん、と思っているんだろう。もう少しSNSに敏感になった方がいい。

 お医者さんに聞くと、下手なのに手術が好きな医者、というのはいるらしい。
 とはいえ、初心者で下手な医者をいちいち起訴していたら、医者なんかすぐに絶滅してしまう、ということもあるんだろうが程度問題だ。今回のように、医師個人に問題があった場合に、その周りの人は何をするべきだったのか。手術は密室でひとりでやっているわけではない。テレビドラマで見る通り、麻酔科医や外回り看護師、機械出し看護師、など複数でかかわっているはずだ。

 こいいうのをなんとかするためにアメリカで開発されたのがTeamSTEPPSである。チームステップスと読む。医療以外でも使えるので、興味のある方は米国厚労省であるAHRQのサイトを開いてみてほしい。TeamSTEPPSとアンガーマネジメント(特に、怒りのメカニズムの学習)は、義務教育のの必須科目にしてもらいたいと切に願う。