制作、演出、撮影、照明、録音、記録、調音、効果、美術、衣装、など。
必殺を作ってきた裏方の皆さんに聞き取りを行ったインタビュー集。
これが面白い。
テレビでよく見たあんなシーン、こんなシーンも、これだけの人たちが、さんざんすったもんだして、知恵出して、喧嘩して、作り上げていたのだとは。その方法も、想像していたものとは全然違って、こちらの方がよほどドラマチックだ。
エキストラに数回参加したり、ドラマのメイキング映像やNG集をバラエティ番組の番宣ででちらっと見ただけで、知ったようなこと言っていた自分が恥ずかしくなる。
「必殺」は好きで長く見ていたが、撮影の裏方さんに興味があったわけではなく、本書を手にするまでは、読むのなら、出演していた名のある俳優さんたちのインタビューの方がいいのにな、と思っていたが、いやいや、こちらの方が格段に面白かった。芸能人のインタビューなら言うことも言えることもだいたい想像がつくけど、その俳優さんたちの印象を、裏方の目でちらっとこぼしているのを読めば、その方がよほどリアリティを感じた。
また人間関係や権威勾配がやたらややこしそうなドラマ撮影現場の裏話もあり、ぶっちゃけ、映画やドラマは、何も知らないで画面を眺めて楽しむのが一番だと心底思える。
決して恵まれていたわけではない現場で、とりあえずなんらかの事情で必死にモノづくりに励んでいた人たちの、美しくもなければ感動的でもなく、ただ「そうせざるをえない日々の営み」が、飾る気もないことばで、遠慮がちながらも本音で綴られている。
しかし、この本、出版社はどのくらいの販売数を見込んだんだろう。俳優ではただひとり、山崎努さんのインタビューが載っているが、それだけで売れると踏んだわけでもないだろうに。
丹念に取材をした著者も、刊行した出版社も、えらい。ありがとう。
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