時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

映画「燃えよ剣」

 手元に、月刊「秘伝」2020年6月号がある。特集は、「新選組の剣」。表紙は、映画新選組のポスターから土方歳三に扮する岡田准一のアップ。

 マニアックな武術専門誌としては異色の号だ。岡田准一氏が武術に造詣が深いことから、このような特集ができたのだろう。芸能誌や映画雑誌ではなく武術雑誌である。思わず買ってしまった。誌面の冒頭は、岡田准一氏へのインタビューなのだが、さすがの武術雑誌らしい切り口で、氏が映画でこだわった殺陣や武術について、そしてそれを映像でエンタメとして魅せることへの苦心が語られていた。誌面では、映画は近日公開と書かれている。この号が刊行される時点では、映画の公開延期は決まっていたはずだ。コロナ禍での自粛生活真っ只中の頃である。

 それから1年と3か月。ようやく「燃えよ剣」が公開された。

 映画は、約2時間半で、バラガキ時代から函館での最期のシーンまでを駆け足で綴る。土方歳三の生涯をダイジェストで見る感じで、先に小説を読んでおく方がいいとは思うが、決して中身が薄いわけではない。だれることなく濃密な時間を過ごせた。

 

 新選組が結成される前の土方たちがいい。土方が乗り移ったかのような岡田准一さんはもちろんいい。そして沖田総司がすごくよかった。ジャニーズのアイドルグループHey!Say!JUMPの山田涼介さんが演じている。この沖田総司もドラマや小説のキャラクターとして一定のイメージが定着しているので、演じる側は、そこに自分をどう重ねていくのか、けっこう難しいと思うのだが、「そうそう、沖田はそう!」といいたくなる沖田総司っぷりなのだ。

 

 「燃えよ剣」は、若いころに読んで、かなりはまって、土方歳三の最期の地を目指して函館まで行ったこともある。司馬遼太郎の小説の中で生きていた近藤が、土方が、沖田が、目の前のスクリーンに蘇った。

 そんな映画だった。

 だが、岡田准一氏創案の殺陣をはじめ、決して昔ながらの時代劇ではない。新しくて、激しい、今を生きる時代劇である。