新聞の書評で見かけた。まったく知らない作家だった。
読んでみて、これは面白かった。ハラハラドキドキのミステリーとか、そういうのではなく、静かな読書感である。設定そのものが、非日常的でファンタジー感もある。が、ファンタジーという語感から想像されるようなメルヘンでもない。
心に傷を持つ人たちの、それゆえの心優しさが不幸を呼ぶ、救いのない話なのだが。
気が滅入る、というより、せめて救われてほしい、という祈りをともなう読後感だった。
不思議な小説だったが、小説ってこういうことができるから小説なんやな、と思った。