1962年のニューヨーク。ホワイトハウスでも演奏した著名な黒人ピアニストが、南部での演奏ツアーを行うにあたり、運転手をスカウトする。スカウトされたのは、無学で粗野だが、持ち前のキャラクターで家族や友人に慕われる白人の中年男。
実話なのだそうだ。
映画は、このふたりが車に乗って旅をするロードムービー。たぶん生涯行くことがないだろうアメリカ南部の風景や風物を見てみたい、程度の興味で見てみたのだが。
この白人の運転手、吹き替えの声優さんの演技なのかどうかはわからないが、のっけからビートたけしに見えてしょうがなかった。キャラ的にビートたけしが(今よりもうちょっと若いころの)演じてもまったく違和感がない、というよりぴったりくるだろうなぁ、と思いながら最後まで見た。
保守的な南部における黒人差別は、ホワイトハウスでも演奏して天才ともてはやされるピアニストにも容赦なかった。
という重く暗くなりがちなテーマが、ビートたけしの飄飄とした演技によって人情喜劇に転化されていく。
それにしてもアメリカは、映画のテーマで人種差別を扱い、人種差別がテーマではない娯楽映画でも、登場人物の中の、正しいことを言って尊敬されている中間管理職、みたいな脇役に黒人を使ったり、普通に大統領が黒人だったり、と映画だけ見ていれば、もう人種差別なんてないんじゃないか、と思ってしまうのだが、今でも現実はそうでもないらしい。
肌の色が黒い人を差別する、というより、「貧困を根本原因にした犯罪傾向の強い人を敬遠、嫌悪しているのだが、そういう人には比較的黒人が多い」ということなのかもしれない。
なんて難しいことを考えなくても、上質の人情喜劇を楽しみながら、観終わった後に、けど今でも実際、こんなことあるよな、と考えてしまう。
面白かった。