時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

読書メモ 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 歌田年 宝島社 2020年

 第18回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作である。なんと、本体の紙が8種類使われている。宝島社らしい遊び心だ。それぞれ厚みや見た目、インクの乗りなんかが微妙に違う。はずだ。わざわざそんな手のかかることをしているのだ。だけど、おーっ、本なんてみな同じだと思っていたが、使われている紙にはこんなに種類があり、違いがあるのか、と思うほど、素人には差が分からない。そもそも、そんな紙の違いを気にしている余裕がないくらいに、一気読みだった。

 細かいところを振り返れば、ツッコミどころもあるにはあるが、エンターテイメントとしてのスピード感で気にならない。ただ、タイトル通りの紙のうんちくが語られて、紙オタクの世界が繰り広げられるのかと思ったが、印象としては、模型とプラモデルのうんちくの方が興味深かった。特に物語が佳境に入り、終盤近く、いかにもエンタメなキャラが登場し、劇場版名探偵コナンか、と思うくらいの疾走感でクライマックスに突入していく。登場人物のキャラの立ち方から、シリーズ化もありそうだ。映画というよりアニメに向いているかもしれない。