時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

読書メモ Let’s ゆるポタライフ こいしゆうか 山と渓谷社2019

たのしくおしゃれに自転車生活はじめませんか? というキャッチが入っている。マンガである。エッセイ漫画というらしい。登場人物のOLらしき女子2人が、自転車にはまった知人から「遊びながら痩せられる!」と聞いて自転車をはじめようとするところから話がはじまるので、自転車に関しては超初心者向きである。もともと持っていた古い自転車を引っ張り出してきて、知人のイケメンモデルを指導講師役に、ポタリングを経験。街の走り方を学んで、徒歩より楽に、少し遠くに、を合言葉に、1日10㎞以下の「ゆるポタリング」宣言。さて、新しい自転車を買いに行こう、というところから、何を買えばいいか、の情報があり、さあ乗ってみよう、というところから最低限のメンテナンスのレクチャーがあり、遠乗りに必須のパンク修理のレクチャーがあって、いきなり「輪行」体験。自転車を分解して輪行袋に入れて、それをかついで電車に乗る。電車で目的地についたら、そこで自転車を組み立てなおして、現地をポタリング。登場人物の2人組は、一人は折り畳み式のミニベロ、もう一人はロードタイプというコンビである。このおふたり、鎌倉の輪行を経験したら、次はいきなり、2泊3日でしまなみ海道に向かう。いやいや、ゆるゆるポタリングというなら、もう少しチャリ散歩の楽しみを伝えてもいいのに~と、しまなみ海道には当分行けそうにない私は思う。

 ポタリング、あるいは散走ということばもあるが、自転車で街を走ればいろいろな新発見に出会う。見慣れた、あるいはしょっちゅう車で通っているような「近郊のショッピングモールまでの道」であっても、車の時速60㎞では見えない景色が、自転車の時速15㎞だと見えてくる。車で通る道を避けて、一筋脇道に入るとまったく違う景色になる。知らなかった神社があったり、古い家並みがあったり、昔の赤い円筒形の郵便ポストが現役で残っているのを見つけた時もある。

 そうやって何かしらの思わぬ発見をした瞬間に、チャリ散歩は「旅」になる。なのでチャリ散歩をするときは、できるだけ「道に迷う」ことにしている。細道を見つけたら、考える前にさまよいこんでいく。ふらふらと田舎道を走っていると、路地だと思って入っていったら民家の玄関先で行き止まりになっていて、庭にいた住人に「何の御用?」と不審がられたりもする。かと思えば、いきなり視界が開けて目の前に田園風景が広がることもある。

 さて、ゆるポタ初心者のおふたりは、いきなり聖地ともいえるしまなみ海道を制覇したのだが、まだまだポタリングライフを続けるようだ。

 本書で個人的に興味深かったのは、ミニベロとロードがさりげなく比較されていたこと。実は、次に買い替えるときに、ミニベロにするか、ロードバイクにするか、ずーっと楽しみながら迷っているのだ。同じ眼鏡とはいえ、運転用の遠くが見える眼鏡と、近くが楽に見える老眼鏡みたいに、用途が違う。2台持てばすべて解決ではあるのだが…。まだしばらく迷うことにする。

 ちなみに、ポタリングででも時速20キロくらいになると風が変わる。風の中にいる感覚が心地良くなる。

 昔オートバイに乗っていた頃は、自転車で風を感じるなど夢にも思わなかったが、オートバイで走っているときの、強風と風切り音とエンジン音を全身にまとう感覚よりは、時速20キロの風の方が今は楽しい。