時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

「報道ステーション」のCM動画が炎上したとか

 ちらっと見てみたのだが、でもってあくまでも個人的な感想なのだが、

 20代後半から30代前半と思われる平凡なOLさん風の女性が、カメラに向かってなんだかんだと楽しそうに雑談を始めるのだ。カメラに向かっての一人しゃべりなので、視聴している人が話しかけられている風な映像だ。で、あれこれと雑談している中に、ちょこっと時事の話題が入ってくる。それを聞いて「こいつ報ステ見てるな」と字幕が入る。これで30秒。

 この女性のセリフが、今日会社に先輩OLが赤ちゃんを連れてきた、とか、化粧水を買った、という「あるある」な、たわいない話題なのだが、その中に今時ジェンダーをスローガンにしている政治家は古いとか、国の借金減ってない、とかの話題をぶっこんでくるので「こいつ報ステみてるな」と聞き手が思うという構成である。

 

 これをドラマの1シーン、あるいは、寸劇としてみたら、何を感じるか。素直に感じたのは、普段コスメとグルメの会社の愚痴くらいしか話題がなかった彼女が、いつもと同じ調子で雑談しているのに、その雑談に、いつもと違って、時事ネタがさりげなく挟みこまれているのを聞いて、聞いていた側、(こいつ、見てるな、という口調からしてちょっと年上の彼氏なんだろうか)が「時事ネタに詳しくなるなんて、こいつ賢くなったな。さては報ステ見てるな」と思ったということだと思う。そんな風に感じた。

 もしそうだったとしたら、この俳優さんに体現されている世間の2~30代の女性たちは「バカにするな」と怒るべきだと思う。

 

 さらに勝手な想像を書くが、この女優さんには、演出の方から、セリフの中で時事ネタに触れる部分も、先輩が赤ちゃん連れてきた話題や、化粧水買った話題と同じ調子でしゃべってくれ、という演技プランが示されたのではないだろうか。絶対そこだけ浮いたような話し方や表情にならないように、雑談部分と同じ調子で、と。そうすることで、いつもの愚にもつかない雑談に付き合ってる彼氏が「あれっ」と思うわけであり、おっと賢くなったな、と思うわけである。「かわいいだけじゃなくて、かしこくなったな」というまさに上から見下ろした男性目線である。

 

 だとしたら、それこそ五輪がらみの女性蔑視発言で世の中が敏感になってるときに、左寄り気味の報ステがこれを出すのか、とその鈍感さに笑ってしまう。

 

 観れば賢くなる、というアピールをしたいなら、街でちゃらちゃらしている男子高校生か大学生あたりにバカ話をさせ、その中にちょろっと時事ネタをしゃべらせて「おっ、どうしたこいつ」と思わせて、「実は報ステを見て時事に関心持ちました。ひそかに勉強もしていますよ」というオチにしたら誰も怒らなかったのではないかと思うのだが。

 

 でも、広告の目的から考えれば、広告のターゲットは2~30代の女性。視聴者層としてこの層を取り込みたかったんだろうなぁ、と思う。この層が見てくれれば視聴率が上向くという分析結果が出たのだろう。高校生や大学生の男子にアピールしても広告効果、つまりは視聴率アップは期待できないという考察なのだろうな。

 だったら、それこそ会社の会議の場面で、えらそうな昭和のじじいが、自分だけしゃべってろくに参加者の意見も聞かずしゃんしゃんで議事を流していく中で、2~30代女性の会議参加者がさっと手を挙げて、立て板に水のようにじじいを論破して、視聴者をスカッとさせた直後に「報ステみてるな」だったらどうだろう。

 これだと誰も文句は言わないだろうし、広告のターゲット層の女性にも好感してもらえるかもしれない。じじいの横暴にうつむくだけで声も出せない情けない男ども、の姿を一回なめておいて、そこからヒロインを立てれば、より効果は高くなるかもしれない。

 あっ、そもそも「報ステ」を見て賢くなるかどうかは知らないが、そう思ってもらうための宣伝広告なのだからそういう文脈になる。

 

 あくまでも個人の感想です。なんかこことは違うところを攻撃している意見も見たけど、人間、同じものを見ても食べても、感想は人それぞれなので。

 いずれにしても相手がわずかでも隙を見せたら、突っ込むぜー、攻撃するぜー、正義だぜー、みたいな風潮もなかなかにしんどいものだ。