時速20キロの風

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読書メモ ちょっと驚きの読書体験 「流浪の月」 凪良ゆう

 2020年本屋大賞受賞作ということで前から気になっていたが、ようやく手にした。冒頭から最後まで、心が痛い、というか、ひりひりしっぱなしの、なかなか衝撃的な読書体験だった。かといって決して心が深刻に重くなるという風ではない。なんとなく一気読みしてしまったが、一気読み系の本でよくあるように、ハラハラドキドキのサスペンス感に追い立てられるようにページをめくるのではなく、淡々と読みすすめられるから、しんどくはならない。そういう点でも不思議な読後感だった。

 

 そもそも本屋大賞っていうのは書店員さんたちの投票で選ばれるということで、おもしろい本を見つける、という点ではかなり当てになる賞だと勝手に思っているのだが、この本に賞を出したのだからやはり本屋大賞は当てになる。

 

 「流浪の月」については、あちこちの書店で平積みになっていたので表紙はよく見ていたが、帯の「本屋大賞受賞」という以外は、予備知識ゼロで読んだ。普通は書店で手に取って、帯のコピーをやら袖のあらすじやら、ネット検索して読後感想を確かめてみたりするのだが、この本についてはまったくそういうことをしなかった。理由は特になく、あまりにもよく表紙を見かけるので、それだけでお腹いっぱいになっていたのだと思う。「つまり売れてるってことはよくわかった」という風に。なので、なんとなく敬遠していたのだが。

 

 ありえなさそうに思えるが、さほど無理せず受け入れてしまえる。登場人物の感情に寄り添っていける、というような不思議な感覚だった。