時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

七草がゆをたべました。

 草の苦みみたいなのが口に胃に心地良いし、これはやはりおかゆに入れて朝食べるものだな、と毎年思う。昔の日本人の知恵ですね。この七草というのも、この冬の時期に身近に手に入る緑だったんだろうな。雪解けのころの山菜の類もそうだが、特に雪に閉ざされるような地域では、新鮮な緑を食すことが相当貴重だったんだろうと思う。苦みがあって味覚として決しておいしいものではないと思うのだが、「春の訪れ」というソースがかかって、舌だけではなく全身で感じる美味なのだろう。

 昔の日本人といえば「幕末単身赴任 下級武士の食日記」青木直己著(ちくま文庫)という本を読んだ。1860年というから今から160年ほど前のこと。和歌山の紀州藩から江戸藩邸に単身赴任した武士の日記を著者が読み解いて解説してくれる本だ。この日記、決して幕末の世を後世に知らしめるとか、時代の考察を史書として書き残す、とかではなく、本当にただの日記なのだ。大事にしていた昼飯用のおかずを同居している叔父に食われてむかつく、みたいなことが書かれている。仕事は暇なようで、ぶらぶらと江戸の見物をして、食べ歩き、飲み歩いて気楽そうだ。特段大金持ちということでもなく、割とけちけちしていて、魚ではイワシをもっぱら食べていたりする。が、三味線の稽古に通ったり、芝居を観たり、と好きなことにはお金も使っている。

 庶民ではないだろうけど、お殿様でもない、まさに下級武士の生活があけっぴろげに書かれていて興味深い。160年前、というと、うちのおばぁが84なので、おばぁが生まれたときには、まだ80年前だったわけだから、そんなにはるか昔でもない。が、そうはいっても紀州から江戸までは、船も使ったとはいえ、基本は徒歩の旅だったようで、科学技術の進歩でいえばはるか昔の話である。

 この本、著者の語り口の影響だろうけど、読んでいて日記の主の酒井伴四郎さんがとてもかわいい。読んでいて気分がゆったりとしてくる感じ。お江戸の街並みをちょっと覗いてみたくなる。

 

 さて、末尾になりましたが、あけましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願い申し上げます。