時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

自転車散歩 去り行く季節を惜しんで。二色の浜

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 好天。最高気温28℃の予報。なので海を見に行くことにした。コンクリートで囲まれた海ではなく、波があって磯の香りのする海に。

 というわけで、今日のチャリ散歩は二色の浜を目指す。もう何度か行っている。ぶらぶらと散歩気分で走って1時間半くらいの行程だ。行きは国道26号を使った。車で行くときに使うルートで、自転車で走っても面白くはないのだが、国道沿いのいろいろな店を見ながら走る。店といっても全国チェーンのお店ばかりで珍しい店があるわけではないが、その手の店には、急にトイレを借りたくなっても、わりと気兼ねなく入れるとか、安心感がある。堤の交差点を右折して狭い道に入る。この道をまっすぐ行けば、海水浴場に着くはずだ。昔、車で行くときにこのルートを使った。

 さて、堤の交差点を右折してしばらくいくと、「奏」というおしゃれなホテルができていた。大浴場もあるらしく、関空からのお客さんを狙ったホテルなのだろう。関空に近いところで一泊する、という目的なら、海が近くて大浴場もある、というのは売りになるのかもしれない。きっと料金もリーズナブルなのだろうし。

 昔、車で来ていたころの記憶では、この道沿いに、「オクトパス」というラブホがあったはずだ。二色の浜から国道26号に接続するこの狭い道は、海水浴シーズンには当然渋滞するので、渋滞する車の中でよくこのホテルを話題にした。海水浴帰りのカップルを狙っているのだろうが、その気はあっても、この渋滞の中、入っていくのはひるむだろうなぁ、というようなしょうもない話なのだが、その話をしているのは、ひるむ必要もまったくない、ラブホとは無縁の面々だった。

 あれがつぶれて「奏」になったのか、と思ったが、いやいや、ちょっと進むと、しっかりとそのホテルはあった。名前はオクトパスではなくなっていて、外観はボロボロで、もしかしたらもうやってないのかもしれないが、建物はかろうじてあった。

 ホテルをやり過ごすと、ほどなくして二色の浜公園に着く。

 浜のそばの空き地は、今日は無人だが、海水浴シーズンには駐車場として営業をしている。車で通りかかると、おっさんが飛び出してきて、奥はいっぱいだし、高いで、ここなら一日中停めても1000円だ、今なら空いてる、と営業してくる。たしかにこの車の量なら、ビーチに近づけば近づくほど、駐車もしにくくなりそうなので、誘われるままにそこに停めることが多かった。実際、ビーチのそばは満車になっていることが多く、あつかましいけど、悪徳業者というわけではなさそうだった。

 

 公園の前の駐輪場に自転車を置いて、まずはビーチに向かう。白い砂浜が広がっている。今年はどこの公園もそうだが、ここもバーベキューが禁止されていて、快適だ。9月も下旬なので水に入っている人はいないが、波打ち際で子どもが遊んでいる。ウィンドサーフィンがいくつか漂っていて、その奥にジェットスキーが数台けたたましい音を立てて走っている。

 しばらくウィンドサーフィンを眺める。楽しいのだろうが、あの大きな道具を運んでくるのも大変だろうな、と思いながら、ビーチで、遊ぶ幼児の足首をぺちゃぺちゃする程度の小さな波と磯の香りを味わった。これで今年については、夏のノルマを果たしたことにする。

 

 ビーチを後にして、スポーツエリアの方に足を延ばそうとさまよっていると釣り場なのかどうなのかわからないが、ビーチのはずれに、海に向かって細長くつきだした通路がある。そこから何人かの釣り人が糸をたらしている。突端まで行くと、そこでも子どもたちが釣りをしている。そんな風にぽつぽつと人はいるが静かだ。釣り人は寡黙なのだ。足元から聞こえる波の音と、遠くのジェットスキーのモーター音がさらに静けさを演出している。水平線に目をやると、関空の橋と淡路島の島影が見える。

 そのあと、スポーツエリアに行ってみた。テニスコートの裏側にあたる海岸が、公園として整備されている。ここも人気がない。ぼんやりと海を眺めながら、缶ビールを飲む。

 ビールは、天気のいい野外で飲むのが一番うまい。普段そんなにビールを飲まないが、こういうシチュエーションはビールに限る。ビールでなきゃ、という感じになる。ただしこの時期、やぶ蚊に食われるのでそこだけ注意。

 二色の浜公園の傍に、虹の湯というスーパー銭湯があって入るつもりでタオルを持ってきていたが、結局入らなかった。毎回そのつもりで来るのだが、海を見ていると、風呂とはいえ建物の中に入るのが惜しくなってしまう。

 

 帰りは海沿いの道を走り、途中から紀州街道に入る。街道に入ると、不思議なもので気温が幾分下がった気がする。古い屋敷が残っていたり、古い店や看板が残っていたりする。街道の道幅は狭く、たまに車が通り、自転車とすれ違うが、歩いている人はあまり見ない。静かだ。街道のチャリ散歩はなかなかに味わい深い。国道26号線が効率的な移動なら、こちらは小さい旅だ。

 

 で、気づいたのだが、このルートは海を見るための夏の定番になっていて、例年、最高気温が35℃を余裕で超えるような日に行って熱中症で自転車ごと転倒したこともある決死の行軍だったのだが、今日のような快適な気温なら、なんてことのない、まさに快適な散歩が楽しめた。何より二色の浜に着いて「あれ、こんなに近かったか?」と思ってしまった。

 けど、やはり真夏の海が見たいので、来夏も猛暑の最中に行くと思う。で、軽い熱中症の症状を呈しながらよろよろになって帰宅して冷水のシャワーを浴びる。何かの行のようなのだが、行ける間は自転車で行きたい。