時速20キロの風

日々雑感・自転車散歩・読書・映画・変わったところで居合術など。

マル、ついに出禁になる。

パピヨンという犬種でもう15歳になるから立派な老犬だ。しかし、気まぐれで、懐かず、噛み癖があって、家族は一通り噛まれた経験を持つ。犬よりも猫の気性で、犬を飼っているらしい喜びを感じたことがない。うっかり触ると噛みつかれるので近くに寄れない。

 そんな犬と15年暮らしているのだが、1年半前くらいの3月の中旬にに体調をくずして物を食べられなくなった。食うことしか頭にないような犬なので、これは一大事と獣医に連れて行ったら「この歳の小型犬なんだから、飼い主さんも覚悟してください。うちは延命治療はしませんので」と厳しく死を宣告されてしまった。こんなあほなマルでも、いよいよ死ぬのかと思うと、さすがに憐れで、家族皆で手厚く介護をしたものだった。

 ちょうどそんな頃、3月下旬のおばぁの83歳の誕生日祝いの鯛の塩焼きを食べさせたのを契機に、もう最期だから、食い意地だけの犬だったからせめて、といいながらぜいたくな食事を与えていたら、気がつくとすっかり元気になり、元のあほのマルに戻ってしまった。しかもそれ以降は、最後の晩餐・看取りのごちそうレベルのメニューでないと食べなくなって、食事のレベルがあがってしまい、なんや、死ぬ死ぬ詐欺やないか、と罵倒されるくらいに復活した。

 春になり、延命治療はしない、といった獣医のところに予防接種にいったら「あんた、まだ生きてたの!」と驚かれたりした。その時、快気祝いだといって、獣医からビニルの小袋にビーフジャーキーを山盛りもらったのだが、獣医からの帰り、買い物に寄るためちょっと車の中で留守番させていたところ、戻ってきたら挙動不審で、あっと思って車の床を見たら、カバンに入れてあった獣医からの快気祝いのビニルの袋を食いちぎって、中のビーフジャーキーを全部食っていた、というくらいにあほなマルである。

 もちろんこんな犬なので、家ではシャンプーもさせないし、毛を切ることなどぜったいに無理なので、トリマーさんにお願いして年に数回散髪をしてもらっている。

 パピヨンだからよね、と思う方もいるだろうが、マルが毛を切るのは、ほっとくと毛玉のようになって夏場異様に暑そうなのと、尻の毛がふさふさしてくるとトイレの粗相をするからである。しっぽの付け根の毛のにうんこを大量につけた室内犬と一緒に暮らせばわかるが、これがなかなかにスリリングなのだ。

 だからトリマーを頼むのだが、「パピヨンに見えなくていいのでつるつるにしてください。特に尻の毛を」とオーダーする。しかし、どうもそこでもおとなしく毛をかられるわけもなく、引き取りに行くたびに、毎回なんやかやと小言をいわれるのだが、今回はついに、散髪中の動画を見せられ、こんなことなんで、と。そこには野獣のように暴れまくるマルのあほな姿が映っていた。もう高齢犬なので、こんな風に興奮して暴れて急に体調が崩れても、私どもは獣医ではないので手は打てないし、責任も持てないし、申し訳ないんですが~、とついに出禁を言い渡されたのである。

 マルはといえば、トリマーさんがたぶん傷だらけになりながら、これでもかとばかりに必死に刈ってくれた魂の5厘刈で、もはや、この動物はどうやら犬らしい、ということがかろうじてわかるが犬種などはまったくわからないくらいのつるつるっぷりである。

 互いに全身全霊で戦ったのか、マルも帰宅後はへろへろだった。あほである。

 猛暑の夏。がんばれ老犬マル。それはそうと、これからどこで散髪してもらうねん。